―リリーという名前について―
20世紀に大活躍した女流ハープ奏者リリー・ラスキーヌからとったのかもしれない。
ハープの世界的シェアで言ったらぶっちぎりで筆頭になるであろうメーカー、ライオン&ヒーリー社(Lyon&Healy)をもじったのかもしれない。
―ハープについて―
ハープとは、西洋音楽で用いられる弦鳴楽器の一種である。弦鳴楽器の5分類の内ハープ属に属し、弓を使わずにもっぱらはじいて音を出すため、撥弦楽器に分類される。日本語では竪琴に含まれる。
世界で最も古い楽器の1つで、同種の楽器は世界各地に分布している。
ハープの起源は狩人の弓ではないかと考えられている。最も古いハープの記録は紀元前4000年のエジプトと紀元前3000年のメソポタミアのものではないかと言われている。
(これについてリリーも「弓を楽器にしようと思ったのか、弦を鳴らしていたら武器にできると思ったのか、それはわかりません。鶏と卵ですね。」と語る。)
歴史が古い一方で、時代の変化、技術の進歩によって姿を変えながら生き続ける、「古くて新しい楽器」でもある。
リリーの持つハープは、現代のオーケストラ等でも使用される「グランドハープ」に近いが、半音を操作するペダルが見られないため、「ノンペダルハープ」ではないかと推測される。
(日本で「ノンペダルハープ」と言うと「アイリッシュハープ」を指す事が多いが、ペダル式でなくレバー式の「アイリッシュハープ」はペダルを使わない「ノンペダルハープ」の一部という意味であり、必ずしもイコールではない。)
見た目通りに重く、グランドハープより軽いノンペダルハープであっても、140cmのハープで15kgほどになる。
一般的なグランドハープは180cm、ペダルアクション機構がなくともさらに重くなるだろう。(殴ったほうが早いとか言わない)
最大で47本ほどの弦が張られる楽器であるため、音階を判断するために、ドに赤、ファに青と色付きの弦を張っている。
また、ハープを奏でるのに指の腹を使うため、慣れるまでは指に血マメができ、硬くなったら柔らかな音が出ないからとマメになったら皮を定期的に剥くなど、個人差はあれど初期は必ず通る道らしい。
神秘的な印象と美しい音色とは裏腹にどこか現実味を帯びた楽器である。
―スキル名「亡き王女のためのパヴァーヌ」について―
元ネタは、モーリス・ラヴェル作曲『亡き王女のためのパヴァーヌ』であろう。
ただし、邦題は直訳かつ韻を踏んだ表現が選ばれており、作曲者が本来意図するのは「いにしえの王女のためのパヴァーヌ」に近いものとなる。
この曲自体は1900年前後に作曲されたものであり、編成に「ピアノの代わりにハープ」を組む事もある、言わばハープが主役を張れる現代の曲の一つである。
―"さる高貴な御方"マリアお嬢様について―
スキルの由来と思われる『亡き王女のためのパヴァーヌ』の作曲者、モーリス・ラヴェルが同曲のインスピレーションを得たと言われる、ルーブル美術館にある「マルガリータ王女(の肖像画)」が元ネタではないかと思われる。
あるいは、わりと身も蓋もないメタな見方になるが、ハープの活躍できる曲として『亡き王女のためのパヴァーヌ』が先にあり、その(必ずしも正確でない)邦訳の『亡き王女』から、「リリーにとっての『亡き王女』」を着想し、「前の主人の"高貴な女性"」という設定に至った、という考え方もできるかもしれない。この場合は元ネタのない、純粋にガルシン劇中の架空の人物という事になる。
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