チェレスタ。 鍵盤楽器に該当し見た目は小型のピアノなのだが…
「鍵盤を押すことで連動したハンマーが金属板を叩く」というピアノと鉄琴の間の子のような構造であり
ハンマーの先端が柔らかくその為オルゴールと鉄琴の間の子のような音が出る となかなか複雑。
要は「鉄琴をピアノで演奏する楽器」であり 操作の仕方から高度な演奏に向いている。
歴史に関してはやはりグロッケンシュピール(ベルシュシュ)の流れに沿う。
元々「教会の鐘」の練習用楽器として生まれたものの中にチェレスタに近い構造が存在していたが
グロッケンが今のような「鍵盤上に並べた鉄板をマレットで叩く」ものが主流になって行き一度は廃れた。
(当時出てきたのはチェレスタと言うより「鍵盤付グロッケンシュピール」の意味合いが強い)
そして19世紀にパリで「オギュスト・ミュステル(現在は製造を止めている)」が今のチェレスタが開発された。
しかし当時はグロッケンの存在もありあまり注目はされなかった。
アンリとのキッカケ、「こんぺい糖の踊り」の奇跡
チェレスタが一気に広まったキッカケがチャイコフスキー(イリーナ・チャイコフスキー)の「こんぺい糖の踊り」である。
こんぺい糖の踊りは高音パートのチェレスタと低音パートのバスクラリネット(アンリ)が入れ替わりでメロディを担当する。
バレエ曲ではあるが、某魔法学校のハリウッド映画のBGMで使われたりと意外と認知度が高い。
当時「くるみ割り人形 こんぺい糖の踊り」を作曲中、メロディの担当楽器で悩んでいたチャイコフスキーが
アメリカに飛び立つ直前のパリで発売して間もないチェレスタの演奏音を聞いて即決。
故郷ロシアに居る友人に「買ってアメリカに送ってくれ、そして誰にも見せるなよ」と手紙を出した。
その後オペラ「くるみ割り人形」の「こんぺい糖の踊り」をチェレスタで演奏、これが大成功し一気に知れ渡る。
当時この演奏がチェレスタにとって初めてのオーケストラ運用であり
「この曲とこの結果がなければ今にチェレスタという楽器は無かった」とも言われていた。
それだけアンリとチャイコフスキーとは深い恩があったのだ。
なお…チャイコフスキーがあの時にチェレスタを見つけていなければ
「アルモニカ」というグラス・ハープ(水を入れたグラスを指で擦った楽器)の派生種でやっていたと思われる。
(チェレスタの音を聴く前はアルモニカでの演奏を前提に組まれていた)
鍵盤付グロッケンとの違い
ベルシュシュの元ネタでも登場した「鍵盤付グロッケンシュピール」と基本同じだが大きな違いは「ハンマー」。
チェレスタは柔らかめであり、鍵盤付きグロッケンは普段グロッケンで使ってるのと同じ硬いものを採用する。
またチェレスタ自体は19世紀頃からの楽器であり使用している作曲家も近代作家が多い。
チェレスタの代表曲と言えば
マーラーの交響曲第7番、プッチーニのトゥーランドット、ラヴェルのマ・メール・ロアやダフニスとクロエ 辺りになるが
どれも20世紀で生まれたかなり新しめの楽曲になる。
対して鍵盤付グロッケンシュピールの代表曲になると
ヘンデルのサウルや陽気な人、思い耽る人、穏健な人、モーツァルトの魔笛 辺りになり
18世紀ぐらいに生まれたモノとなる。
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