ダウルは、トルコの打楽器であり、木管楽器のズルナやシンバルの原型ズィルとともにオスマン帝国の軍隊音楽であるメフテルに用いられた。
- メフテルについて
オスマン帝国はかつてトルコ民族のオスマン家によって現在のトルコ共和国に建国されたイスラーム教国家であり、メフテルはかつて中央アジアから移住してきたトルコ民族の軍隊音楽と伝統的なイスラーム世界の音楽を融合させた音楽である。 オスマン帝国は最盛期には東欧のほとんどを手中に収めるほどの勢力を誇っており、一時期はオーストリアの首都ウィーンを包囲するほどの勢いであった。 包囲下のウィーンにおいてもメフテルの異国情緒あふれる響きは響き渡っており、モーツァルトやベートーヴェンといったクラシックの作曲家たちにインスピレーションを与えた。*1 彼らによって作曲された「トルコ行進曲」と呼ばれる楽曲はメフテルに影響を受けたものである。 しかしオスマン帝国はその後衰退・西洋化していき、メフテルは時代遅れの音楽として廃止されてしまった。 しかし、民族アイデンティティの意識が高まった20世紀にはメフテルが見直され、第一次世界大戦のオスマン帝国軍によって再び演奏が行われた。 その後オスマン帝国が滅亡し、トルコ共和国が建国された後もメフテルはトルコ民族の民族音楽として保存され、演奏が行われている。
メフテル(Mehter)は正確には単数形でメフテルの個々の楽器を演奏する人のことであり、 メフテルを合奏する人たちはメフテラーン(Mehteran)、メフテルの軍楽隊はメフテルハーネ(Mehterhane)と呼ぶ。
- ダウルについて
ダウルは大きな両面太鼓で、ロープで演奏者の前に吊り下げて演奏される。
クラシック音楽の大太鼓は、ダウルがヨーロッパに輸入されて形を変えたものである。
スキル解説
メフテル・マルシュ(Mehter Marşı)とはトルコ語で「軍隊行進曲」のことである。
メフテル・マルシュの中で最も有名なものは「ジェッディン・デデン(Ceddin Deden)」であろう。
参考音源:https://www.youtube.com/watch?v=Ulg1ahV552g
20世紀に作曲された比較的新しい曲であるが、中東やトルコを象徴する音楽として日本のテレビなどでも使われることが多い。
特に故・向田邦子脚本のテレビドラマ「阿修羅のごとく」(1979-1980,NHK)のテーマ曲・劇伴として使われたことで、国内での知名度は一気に上がった。
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