鉦鼓(しょうこ、しょうご)は雅楽に用いられる打物(うちもの)と呼ばれる打楽器の一つ。
鉦鼓の中には寺社の儀式のために作られたものも存在するが、本項ではショウコの元ネタである雅楽器の鉦鼓について扱う。
鉦鼓の構造は、鉦(かね)と呼ばれる金属製の円盤を枠に紐で吊るして固定した体鳴楽器である。
鉦の裏には灰皿のような凹面があり、その凹面を桴で摺るようにして打つことでつつましやかな高音を奏でる。
基本的な奏法は片方の桴で1回だけ鳴らす「金(きん)」と両手の桴で交互に1回ずつ音を出す「金金(ききん)」の二種類である。
雅楽においては他の打物である太鼓、鞨鼓(かっこ)もしくは三ノ鼓(さんのつづみ)と共に合奏のリズムパターンを作り出す役割をもつ。
各小節の節目に太鼓にわずかに遅れて打つことで装飾的な響きを加える奏法が大きな特徴である。
熟達した楽師による演奏ならば、太鼓と鉦鼓の音が一体になったかのような不思議な感覚を味わう事ができるだろう。
雅楽に使われている鉦鼓は大きく分けて以下の三種類がある。
・釣鉦鼓(つりしょうこ)
管絃(かんげん)と呼ばれる打楽器、絃楽器、管楽器で構成された器楽合奏(楽器のみの合奏)に用いる。
鉦を枠付きの四足台(架)に吊るしたもの。
枠の頂部に火焔形のかざり金具をつける事が多い。
全体の外観はショウコが使用している武器とだいたい同じである。
鉦の材質は青銅製が主流。鉦の直径は15cm前後。
・大鉦鼓(おおしょうこ)
舞を伴う舞楽に用いる。
構造は釣鉦鼓と同じだが、全体が一回り大きい。
枠の周囲に火焔、雲文、宝珠、龍、鳳凰などの極彩色でいろどられた木彫があしらわれたものが多い。
鉦の材質は真鍮製が主流。鉦の直径は37cm前後。
・荷鉦鼓(にないしょうこ)
法要や大喪の礼などの儀式で行列を作って歩きながら演奏する道楽(みちがく)で用いる。
鉦を吊るす枠に担いで持ち歩くための柄を水平に取り付けたもの。
大鉦鼓と似たような装飾があしらわれているものが多い。
鉦の材質は真鍮製が主流。鉦の直径は24cm前後。
なお、大鉦鼓については釣鉦鼓で代用されるケースが非常に多い。
正式な舞楽用の舞台をあつらえるのは金銭的な負担が非常に大きいためである。
大鉦鼓それ自体も高価なのだが、一緒に使用する舞楽用の太鼓である大太鼓(だだいこ、火焔太鼓ともいう)は新調するだけでも数千万円は楽にかかってしまうのである。
鉦鼓の音色を味わってみたい方は、打物が最も活躍する「陵王乱序」という曲をきいてみる事をおすすめする。
太鼓と鉦鼓が四拍のリズムをきざみ続け、鞨鼓がその間を縫うように打ち鳴らす中、数管の龍笛が追吹(おいぶき)を奏でるシンプルな曲である。
※ 追吹 : 各管が少しずつ演奏を始めるタイミングをずらして同じメロディーを吹く奏法。クラッシックでいうところのカノン。
~ショウコのスキル名 右舞・綾切について~
右舞 綾切は右方の四人舞で、多人数でゆったりした所作で舞う平舞(ひらまい)の一つ。
どこか能面を髣髴とさせる、なにやらジト目でこちらを睨んでいるかのような表情の舞楽面を付けて舞う演目である。
・右舞と左舞
雅楽にはいろいろな分類があるが、その中でも大陸や朝鮮半島にルーツを持つ演奏形式のうちで舞を伴うものを舞楽という。舞楽は左方と右方に分かれており、舞の形式や楽器編成が異なる。左舞は主に唐、インド、ペルシャなどをルーツとする大陸系の楽舞で構成されており、右舞は主に朝鮮半島や渤海をルーツとする楽舞で構成されている。左方、右方共に現代に至るまでに一定の形式にしたがって手を加えられて国風化しているため、演目による差異は小さくなっている。なお、外来音楽の作風や理論にならって作られた日本由来の演目も多く含まれている。また、左方と右方両方に割り当てられている例外的な演目も存在する。
-以下余談-
舞楽がなぜ左方と右方に分かれているのか?と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれない。
はっきりした経緯はわかっていないが、古代日本の政治制度である左右両部制や陰陽思想の影響を強く受けたためであるとされている。
演奏・儀式の主体となる組織に合わせて演目を左方と右方に振り分けたり、陰陽にあてはめるといたことが行われていたというのだ。
例えば右近衛府のための儀式に用いるならば右舞、左近衛府のための儀式に用いるならば左舞、陽をあらわすのは左舞、陰をあらわすのは右舞といった具合である。
~ショウコの妹のミコについて~
名前からすると雅楽器の打物の一つである三ノ鼓(さんのつづみ)が元ネタであると思われる。
三ノ鼓は砂時計形の胴をもつ鼓(つづみ)の一種で、右舞の伴奏に用いる。
鼓はインド生まれの楽器であるが、三ノ鼓は中国で作られた三鼓という鼓が日本に伝来したものであるとされている。
革面と胴長共に40㎝前後の大きさで、日本に現存する鼓の中では最大の大きさである。
ちなみに、鉦鼓は奈良~平安時代前期に雅楽が国風化する過程で日本で生まれたとされている。
つまり、元ネタである楽器が作られた年代的に見れば本来はミコの方がお姉さんということになる。
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