まず「グロッケンシュピール(以降グロッケン)」という名前よりも「鉄琴」の方が馴染みがあるだろう。
しかし一概に鉄琴と言っても大きく2種類あり「グロッケンシュピール」と「ヴィブラフォン」が存在する。
簡単に言えばグロッケンは小さく、鍵盤下にモーターやペダルが付いていない、箱に入ってる方。
…といっても世間で「鉄琴」といえばこのグロッケンである事が多い。
(ヴィブラフォンはグロッケンより大きく、モーターや消音用のペダルが付いている)
おもちゃの楽器も大まかに言えばこのグロッケンである事が多く、音の出しやすさ、その音の明るさ、楽器の耐久性から子供が扱う楽器としてもよく登場する。
また小型でありながら結構音が出る楽器でもあるため屋外での演奏にも向いており
マーチングの打楽器で「スネア(小太鼓)・バスドラム(大太鼓)・シンバル」の次に「グロッケン(ベルリラも含む)」を思い浮かべる人もいるのでは?
※ベルリラ:グロッケンをマーチング用に最適化した楽器。 構造や音は殆ど一緒だが片手は固定棒を握って片手で運用する。
グロッケンはマレットで金属音板を叩いて音を出す楽器ではあるが、マレットも音板も基本硬い。
硬いもの同士を当てるので鋭く大きめの音が出る。その為下手に強く叩いてしまうと「マレットの先端が割れる」「マレットが折れる」「耳が痛い」という事も。
また鍵盤の性質上音は伸びやすいので木琴全般のようにロール(同じ鍵盤を連打する事)はあまりしない。 というか強くロールすると耳が痛い。
楽器の歴史としてはちょっと面白い事になっている。
元々教会の鐘は「グロッケ」と呼ばれており、これを複数並べ音階上にした一式「シュピール」から「グロッケンシュピール」と言われている。
(パイプオルガン並の)大規模な楽器の為、今でも自動演奏とかが組まれて残っているのを見た(聞いた)事があるだろう。
そう、屋外の時計で1時間単位になったらベルが鳴るあれである。
が、当時教会の鐘を並べた楽器をバンバン鳴らして練習する訳にもいかず (やかましいし、練習してるのバレるし、街中に響くし)
鐘を金属音板に変えた練習用楽器が今の様なグロッケンシュピールとして生まれたのが17世紀頃。
当時はあくまで「練習用楽器」だったため
「鐘が板になったグロッケン」「鐘を叩く構造の鍵盤を付けたグロッケン」
「ガラス棒を叩くグロッケン」「金属棒を横に並べたグロッケン」
「パイプオルガンぐらいの板を並べたグロッケン」 等
多種多様なグロッケンが生まれる。 明らかに練習用じゃないのもある
魔笛が生まれたのはこの頃たったため、どのグロッケンを使うかが分からないのだが和音を求められる事から鍵盤付のものが濃厚とされている。 それチェレスタじゃん
結局、鍵盤を除きマレットで叩く今の状態を「グロッケンシュピール」と呼ばれ落ち着くようになった。
19世紀頃、似た構造で鍵盤楽器(ピアノとか)になった「チェレスタ」が登場。 なおこちらはハンマー(マレットに相応)がフェルト製の為音が柔らかい。
高度な演奏をするにあたっては鍵盤楽器の方がやりやすいのでそちらにニーズを取られてしまう。
その後グロッケンでもチェレスタ並の技量が求められる曲が作られるようになり「鍵盤付グロッケンシュピール」という鍵盤楽器が再び生まれた。
…そう、今のグロッケンは「ピアノみたいなもの」を指す事もある。ビックリ。
なお鍵盤打楽器全般に言える事だが「音をだすのは滅茶苦茶簡単」な事から「誰でも扱える楽器」 …と思いきや
「これで曲を演奏する」となると腕の運びやコントロールが事細かに求められるため非常に難しいのがこの系統共通の特徴。
そのせいか、打楽器奏者で幅広く扱える人もいれば「鍵盤打楽器だけは苦手」という人も居る。
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