ファゴットはダブルリードの木管楽器である。
フランス語で「二本の束ねられた木」を意味するファゴッテ(fagottez)が由来とされている他、イタリア語の「薪の束」ファゴット(fagotto)が由来ともされている。
フランスの楽器、バッソンも似た構造になっており、この派生から英語圏ではバスーンと呼ばれている。
尚、英語でファゴット(faggot)はゲイを侮辱するジッサイシツレイなスラングであり、間違っても英語圏でファゴットと言ってはいけない。
構造は吹き口のボーカル(bocal)、その次にテナージョイント、折り返しのダブルジョイント、上に上がってバスジョイント、ベルジョイントと一般的には5つに分解できる。
長い管体を二つ折りにした形が特徴的で、管の長さは260cm程、高さは135cm前後になる。
二つ折りになっている理由は両手で全ての音孔を塞げるようになっている為で、指への負担を減らすために、音孔が斜めになっている等の工夫がある。
とはいえ、両手の指をすべて演奏に使い、キィの数も30前後、管体も大きくしっかり息を通す必要がある為、奏者には大きな手とある程度の体格が求められる。
音域は中央ハの2オクターヴ下のハのすぐ下の変ロから3オクターヴ強から4オクターヴ弱に及ぶが、最高音域はリードを噛むなどのやや特殊な奏法が要求される。
多少鼻の詰まったような「ポー」という音が特徴である。
16世紀にはダブルリードのU字型の楽器は使われていたが、直接の祖先と言える楽器ははっきりしていない。
ドゥルシアン(カータル)がファゴットに似た形をしていたことから、それを前身とする説が有力である。
17世紀中ごろにはファゴット、という名称が定着している。
元々のファゴットは音が小さく、音程も取りづらく、奏者の技量に左右される楽器だった。
19世紀前半にドイツの軍楽隊長のカール・アルメンレーダーがファゴットの改良に取組み、キイの増設、折り返し部分のU字管の開発などを行い、音の大きく、演奏しやすい楽器となった。
これが後のドイツ式、または改良に協力し、それを引き継いだ楽器職人にちなんでヘッケル式と呼ばれるようになり、イタリア、イギリス、アメリカに広がっていった。
それ以前の仕組みを残しているのは、「バッソン」となり、ドイツ式との対比でフランス式とも呼ばれているが、現在のファゴットはほぼドイツ式である。
こちらのバッソンはヨーロッパでは現役だったのだが、
1930年代にイタリアの指揮者アルトゥーロ・トスカニーニがアメリカのNBC交響楽団の指揮者だった際、欧州公演で「ドイツ式は、いいぞ」とアピールし、
1969年にヘルベルト・フォン・カラヤンがパリ管弦楽団の指揮者になった時にファゴット奏者に「まだバッソン使ってんのかよ…」と言ったなどとされ、散々な貶されようであった。
スキル名 Romance for Bassoonはエドワード・エルガーが当時のロンドン交響楽団の首席ファゴット奏者の為に作曲した作品62「ロマンス(ファゴットのためのロマンス)」が元になっていると思われる。
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