ヤコポ・ペーリ(Jacopo Peri 1561年8月20日 - 1633年8月12日)
イタリア・ルネサンス末期からバロック初期にかけて活躍した音楽家で、初めてオペラを作曲した。
1561年8月20日にイタリアはローマに生まれた。
赤みがかったブロンドの髪から「シャッセリーノ(Zazzerino)」(毛深いとかダンディーとかの意味)という愛称で呼ばれた。ポーラの髪色にも影響しているようだ。
作曲家クリストファーノ・マルヴェッツィに師事しフィレンツェに移り住み、当初はテナー歌手やオルガニストとして数々の教会で働いた。その後作曲家に転身しメディチ家の宮廷に務めた。
初期の作品は幕間劇やマドリガーレ(マドリガル)が主だったようだ。
バルディ伯爵やコルシ伯爵が開いていた音楽サロン「カメラータ」に1590年代に参加し、そこで演奏家でもあるヤコポ・コルシ伯爵と意気投合し、他のメンバー共々古代ギリシャ音楽の復元に傾倒した。復元とは言っても古代のすでに失われた音楽で資料も少なく、大半を想像で補うしか無かった。
その研究の途上、オペラの元となった「モノディ」という様式が生まれた(モノディの発明自体は同じくカメラータのメンバーであった作曲家ジュリオ・カッチーニとされている)。モノディ様式とは主旋律+伴奏という現在の音楽では当たり前となっている様式である。当時はまだポリフォニー(全体が複数のメロディで構成されていて伴奏がない)が全盛の時代であったため、かなり革新的な様式であった。
そして世界初のオペラである「ダフネ」は1597年にギリシャ神話を題材に詩人オッターヴィオ・リヌッチーニが台本を書き、ペーリがモノディを使って作曲したが、一部それらしいとされる譜面を除いて現存していない。
2作目のオペラであり、現存する最古のオペラ「エウリディーチェ」(後述)は1600年に作曲された。台本は同じくリヌッチーニである。
上演は成功し、他の作曲家も続々とオペラ作曲を行うようになり、その後30~40年の間にオペラ劇場がいくつも建てられ、イタリアオペラの時代が訪れることとなる。
ペーリはその後も他の作曲家(マルコ・ダ・ガリアーノ等)とのコラボレーションでオペラを書いた。
オペラ以外にも宮廷の為に数々の曲を作った。
晩年頃にはペーリのオペラは他の若い作曲家、例えばクラウディオ・モンテヴェルディ等の作品と比べ古臭いものとして廃れていたが、後世の作曲家に与えた影響は決して少なくない。
1633年8月12日フィレンツェで亡くなった。
―主な作品―
- La Pellegrina (1589)
- オペラ「ダフネ」 La Dafne (1597)
- オペラ「エウリディーチェ」 Euridice (1600)
- Tetide (1608)
- Adone (1611)
- La liberazione de Tirreno e d'Arnea
- La Sposalizio di Medoro e Angelica
- オペラ「フローラ」 La Flora(マルコ・ダ・ガリアーノとの共同作品) (1628)
現在では残念ながらエウリディーチェ以外はほとんど知られておらず、また演奏される事も殆ど無いようだ。
―オペラ「エウリディーチェ」にまつわるアレコレ―
スキル名にもなっているエウリディーチェは、ギリシャ神話のエウリュディケーを題材にしたオペラで、モノディ様式を駆使して作曲された。
同じ話を題材にしたオペラは他の作曲家達によっても作られている(クラウディオ・モンテヴェルディの「オルフェオ」等)。
1600年10月6日、フランス王アンリ4世とマリーア・デ・メディチの婚礼の催し物の一つとして、フィレンツェのピッティ宮殿においてエミリオ・デ・カヴァリエーリの指揮で初演された。
一方、初演の際作曲家ジュリオ・カッチーニは自らの影響下にある歌手が出演する場面でペーリの楽曲を歌わせようとせず、自らの楽曲に差し替えるという妨害を行なった。
1601年、ペーリとカッチーニは、改めてそれぞれの手による「エウリディーチェ」を発表したが、その際にもカッチーニはペーリに先んじて曲を出版したり、ペーリ側の歌手にペーリに協力するなと言ったりという妨害を行っている。
余談だが、カッチーニはカヴァリエーリにも妨害工作を行っており、相当我の強い人物だったようだ。
ちなみに「エウリディーチェ」の内容については、「冥府から抜け出すまでの間、決して後ろを振り返ってはならない」というフレーズでピンとくる人もいるのではないだろうか。
ギリシャ神話の有名エピソードのひとつであり、日本神話のイザナギ・イザナミの黄泉平坂の話に似ているネーとよく言われるアレである。
―小ネタ解説―
・『旧き都』って結局どこ?
ゲーム内では『旧き都』の名前は明かされないが、ギリシャの食べ物の名前が挙がるのでギリシャがモデルであろう。
ポーラのキャラクターについては、服装や頭の月桂冠風の飾りといい、オペラの生みの親という面よりギリシャヲタという面の方が強くなってしまっているようだ。
・「とある王族の結婚披露宴」
「エウリディーチェ」初演のフランス王アンリ4世とマリーア・デ・メディチの結構披露宴の事であろう。
・「旧き都を見守る、聖なる山」
ギリシャ神話でも度々登場する、オリュンポス山(オリンポス山)の事。ギリシャ最高峰。
・「ティローピタ」
ティロピタとも書く。ギリシャのチーズパイ。
イーストを含まない、小麦粉と水と少量の油か酢で作られる「フィロ」と呼ばれる生地を用い、
羊の乳から作られる「フェタ」と呼ばれるチーズを包んでオーブンで焼いたもの。
ギリシャの代表的な軽食として、朝食やおやつに好んで食べられる。
・「ルクマデス」
ギリシャの伝統的なドーナツ。シンプルなイーストドーナツで、専門店も多数存在する。
レシピが細かく決められているわけではなく、小麦粉とイースト菌と水のみのものから、牛乳、卵、調味料などをお好みで。蜂蜜やシナモンをかけて食べるのが一般的。最近ではチョコソースがけの物やシロップ入りの物等のアレンジ版も定番化している。
現在でも人気で、ギリシャではアメリカのドーナツチェーン店等よりもルクマデスのお店の方が多いとの事。
武器がドーナツ型なのもこれが元ネタなのかなあ?
・カヴァリエーリは「舞台で聴かれるべき素晴らしい歌の創始者」
エミリオ・デ・カヴァリエーリが、歴史上最初のオラトリオ(聖譚曲)と言われる『魂と肉体の劇』を作曲したという事が元ネタと思われる。
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