【それじゃ、ティンパニの説明をしちゃうからね。】
ティンパニとはお椀型の胴体に脚を取り付けた、大型の鳴膜型打楽器。
だいたいの物は銅製であり、通常は4台1セットで使用される。
ステージの左側でひと際大きな存在感を放つ、打楽器奏者の花形楽器で
ソロやロールで見せる華麗なマレット捌きは、まさに演奏者(パフォーマー)と言って差し支えない。
「要は大きな太鼓なんでしょ?」と言われれば確かにそうなのだが
ティンパニが他の太鼓と決定的に異なるのは正確な音程がとれること。
そのためティンパニの譜面はドやソ等、特定の音程を奏でる前提で書かれており
演奏前には絶対にチューニングが必要という数少ない打楽器なのである。
まあ彼女とかにも曲に合わせたチューニングをするのが普通ではあるが。
またティンパニ(timpani)はイタリア語であり、語源はラテン語のティンパニウム(tympanum)だが
英語圏ではケトルドラム(kettledrum)と呼ぶこともある。
ケトル…大鍋…そう、彼女の鍋好き設定はおそらくここから。
え?普通ポットとかやかんだろって?いやまあそれは、ごにょごにょ…
【歴史とかも紹介しちゃおっか♪】
ティンパニの起源を『お椀型の何かに動物の皮を張り付けたもの』としてしまうと
紀元前何千年の世界になってしまうので、ここでは一般的な元ネタの方でご紹介する。
中東アラブ諸国に存在する『ナッカ―ラ』という楽器。これがティンパニのご先祖様。
鍋底型の木製、あるいは金属製の胴体に皮を張り、紐などで締め付けたもの。
50~30cmくらいの大きさで十分持ち運びができ、2つ1組で演奏される。
中東からインドくらいまでは似たような楽器が数多く見られるだろう。
ここで彼女の紹介文に目を向けてみると『メフテル』という謎の単語がある。
この『メフテル』というのは所謂軍楽隊のことであり、オスマントルコ帝国が発祥。
現在一般的になった軍楽隊やマーチングバンドも、元をたどればこのメフテルに起源をもつ。
ナッカーラはこのメフテルで使用された太鼓であり、馬やラクダに括り付け
『ばち』を使って演奏されていた。マーチングタムの馬版とでも思えばいいだろう。
彼女の趣味の乗馬はおそらくここからきている。
西洋諸国に伝わった経緯は言わずもがな、オスマントルコの大遠征。
すなわちイェニチェリ軍である。戦鍋旗…イェニ=チェリ軍!!
15世紀に西洋に伝わった後も材質や形状は違えど、
同じように馬に括り付けられ軍楽隊で使用されている。
というかそれまで西洋には軍楽隊という文化はなかったため、
「はえ^~ かっこいい~・・・」と思った当時の欧州民たちが
まるっとパクっちゃった結果が現在のマーチングバンドでありティンパニである。
それから改良が進み17世紀からオーケストラにもティンパニは登場し
私達の知るティンパニとなる。
と言っても古典音楽までは他の打楽器同様効果音や、あるいは主音を補う形でしか使用されず、
華々しい活躍をするようになるのは19~20世紀まで時を経なければならない。
さて彼女の元ネタだが
ギュンター・リンガー 【Gunter Ringer】が元ネタとしての最有力候補で挙げられる。
ギヤ式のドレスデンモデルでは、最高峰と言われる楽器で 世界の一流オーケストラで使われている。
+
| | ギヤ式とは
|
ティンパニの脚についているペダルを
演奏者が足元で操作することで音程を変えられる仕組みのティンパニの一種。
従来のティンパニは手締め式で皮の周囲に設置したネジを
締めたり緩めたりすることで音程を変えていた。
ギヤ式は扱いが難しいが1オクターブ以上の音域を
かなりの精度で使用できる高性能品であり高級品。
(楽器経験者の指揮者殿達が使用していたのは、おそらくヤマハのペダルアクション式)
|
ちなみにリンガーモデルを4台セットで購入するとなるとお値段…1000万円ナリィ!
ティンパニストは「第二の指揮者」と呼ばれている。 それは何故か?
- 楽曲にティンパニが入っている譜面は、音楽として重要な盛り上がりのシーンとなる為。
その為、ティンパニストには演奏技術としての的確な入りのタイミングや表現が求められている。
ベートーベン 交響曲第5番 ハ短調 作品67 第1楽章 Allegro con brio ハ短調
でもティンパニを使われている。
ちなみに ベートーベン以降は交響曲 第5番が
各作曲家の重要な楽曲として創られていく傾向が生まれたキッカケになっている。
ティンパニの演奏法は、主に
- ティンパニのマレットの代わりにマラカスで叩く方法やタンブリンやべル等を膜面に乗せて叩く特殊演奏法
が実際に行われている。
他には
- 共鳴の手段として用いる
声や金管楽器などをティンパニに向けて発音し共鳴させる。(きちんとチューニングが合っていないと共鳴しない。)
- 奏者がティンパニの中に上半身の一部を突っ込む
マウリシオ・カーゲルの『ティンパニとオーケストラのための協奏曲』で用いられる奏法。
もしかして彼女の趣味である頭を使う(娯楽)ってここから…?
・・・という演奏法もある。
【有名な曲を挙げていくだけでも一週間はかかるよ。】
と彼女はおっしゃっているが、さすがに「じゃあ割愛!」というのもどうかと思うので
ティンパニが映える曲を超独断と偏見でいくつか紹介させていただく。
+
| | 以下折り畳み
|
・交響曲第9番 ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
説明する必要もない、世界で一番有名な交響曲と言ってもいい大作。
・交響曲第4番 カール・ニーセルン
最後のダブルセットティンパニの掛け合いは圧巻の一言。ぜひ聞いてほしい。
・アルメニアンダンス アルフレッド・リード
吹奏楽部の曲決めの際ティンパニ奏者がやたらと推してくる1曲。もちろんいい曲です。
・三つのジャポニズム 真島俊夫 亡くなるの早すぎるでしょ真島先生…
こちらも吹奏楽曲。ティンパニだけでなく打楽器全般が躍動しています。
・DECISIVE BATTLE 鷺巣詩郎 アニメ「エヴァンゲリオン」より
でーんでーんでーんどんどん♪ でーんでーんでーんどんどん♪
・戦闘!ゲーチス 増田順一 ゲーム「ポケットモンスターブラック・ホワイト」より
ゲーチス!ゲーチス!
|
最後に彼女のスキル『103番・太鼓連打』はそのまま
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン作曲、交響曲103番『太鼓連打』から。
冒頭の1小節目にはいドーン!とティンパニによる導入があるのが特徴的な楽曲。
ところでリンガーさん。この曲は普通にマレットを使うと思うんですがあなた素手d
|