リカルダ・ワーグナー のバックアップ(No.50)

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リヒャルト・ワーグナー　1813～1883

皆さんご存知、ドイツ生まれの有名作曲家。
9歳でピアノを習い始めるも、どっちかというとシェイクスピアなどの劇作に夢中に。
15歳頃にベートーヴェンの作品に出会って惚れ込み、音楽家として生きる道を選んだ。
しかし幾つか作品を発表するも中々評価されず、借金漬けになりながら各地を点々とする。
パリで発表した作品も受けなかったのでフランスが嫌いになり始めていた頃、故郷ザクセンのドレスデンで「最後の護民官リエンツィ」が上演されることが決まる。

この初演が大当たりしたことでやっと注目されたワーグナー、なんと宮廷楽団の指揮者に抜擢される。
「タンホイザー」も最初は微妙な反応だったがじわじわ売れ出してヒット作となり、当時忘れられつつあったベートーヴェンの「第九」を再び名曲として知らしめたりと大活躍。

革命運動に参加したことで国外追放されながら「ローエングリン」を書いたり、
複数女性と付き合いながら不倫の恋を題材に「トリスタンとイゾルデ」を書いたり、
唐突にバイエルン国王から熱烈招待されながら「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を書いたり、
自分の支持者ビューローの妻コジマ(リストの娘)とダブル不倫で子供を作って結婚した上でビューローの指揮で「ニュルンベルクのマイスタージンガー」初演したりと、
とにかく色んな逸話が残っている。

リカルダが親友と呼ぶウェーバーとリストは、わりとアレな性格だったワーグナーが生涯尊敬していたとされる数少ない人物。
ウェーバーは子供の頃から家族ぐるみの付き合いがあり、若い頃の憧れだった。
彼が亡くなった時、ワーグナーは葬送行進曲と合唱曲を作曲し、式典で追悼演説まで行ったという。
リストは亡命生活時代に保護してくれたり、ブラームス派と対立した時も肩を持ってくれた。
リストの娘である妻のコジマさんとは、経緯はともかく一男二女を授かり最期まで仲睦まじく過ごした。

そして1872年、ルートヴィヒ2世の後援を受けて自分の作品のためのバトロイト祝祭劇場を建築する。
「ニーベルングの指環」や「パルジファル」を完成させる頃には、欧州で一番の有名人となっていた。
1883年のヴェネツィア旅行中に亡くなった後も、ナチスに反ユダヤ的な言説を利用されたりと強い影響力を持った。
今でもイスラエルではワーグナー作品の演奏がタブーになっているとのこと。

• バイロイト祝祭劇場について
  　ワーグナーが自分の作品のために計画設計したオペラハウス。
  　毎年7月から8月にかけて「バイロイト音楽祭」が行われ、それ以外の期間（秋から春）には見学ツアーが実施されている。
  　その特徴は、装飾を排し黒塗りにした観客席と舞台下に設けされたオーケストラビットである。
  　装飾を排した黒塗りの観客席は、ヴァイオリンの胴に例えられ、それ自体が音響効果を高める構造になっている。
  　そして、オーケストラビットを舞台下に置くことで観客は舞台に集中でき、反響された音楽が役者の歌と共に観客席に届くので自然と音が調和される効果がある。
  　ちなみに、現在映画館などにおいて上映前～上映中客席の照明を落とすが、これが歴史上最初に行われたのはバイロイト祝祭劇場である。

• ワーグナーとユダヤ人について
  　ワーグナーがユダヤ人を嫌いだったのは有名な事実である。
  　特に、『音楽とユダヤ性』においてマイアーベーアやメンデルスゾーンを中傷したことは、ワーグナーの人格を否定する材料になっている。
  　しかし、ワーグナーはユダヤ人と結構交流している。
  　ヨハン・シュトラウス2世に対して褒めたたえたり、指揮者であるヘルマン・レヴィとは一時期一悶着あったものの最期の時まで良好な関係を築いている。
  　また、メンデルスゾーンに対しても「本当に悪いのは音楽銀行家達で、メンデルスゾーンには同情の余地がある」とも言っている。
  　さらに、当時盛んだった反ユダヤ主義運動への著名も断固として断っている。

• ワーグナーと交響曲ハ長調
  　ワーグナーは楽劇王であり、オペラの人である。
  　しかし、ワーグナーはベートーヴェンの第九に特別な関心を持ち、若い頃は自作の交響曲を何作か作っている。
  　交響曲ハ長調は、ワーグナーは19歳の頃に作られた曲で、プラハにて初演が行われた。
  　この交響曲はなかなかに好評で、当時13歳の天才少女ピアニストクララ・ヴィークは、後に夫になるロベルト・シューマンに対して、
  「あなたはワーグナーに追い越されたわよ」
  　と手紙を宛てている。
  　また、この曲の総譜はメンデルスゾーンにも送られている。
  　しかし、メンデルスゾーンはこれを黙殺し、さらに紛失してしまう。
  　その後もメンデルスゾーンは、ワーグナーの作品を反面教師として演奏したりして、ワーグナーに嫌われる下地を作っていくことになる。
  　この作品以降、ワーグナーはオペラに専念し交響曲の制作から離れることになる。
  　しかし晩年、初演された時のパート譜を探させ総譜を再現、それにワーグナーが手を加えたものが現在残っている交響曲ハ長調の総譜である。
  　そして、ヴェネチアで行われたこの曲の指揮が、ワーグナーにとって生涯最後の指揮になった。