ルシアも言及する通り「フラメンコのために作られた、超カッコイイギター」である。
フラメンコは18世紀末にスペイン・アンダルシア地方で発祥した。
フラメンコというと踊りのイメージが強いかもしれないが、元々は音楽性を重視した芸術であり、カンテ(Cante, 歌)を軸としている。
その音楽を構成するものが バイレ(Baile, 踊り)の靴音, パルマ(Palma, 手拍子), ハレオ(Jaleo, 掛け声)、そしてトケ(Toque)=ギターなのである。
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| | フラメンコの歴史_
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フラメンコは、ヒターノの文化とスペインの文化、アラブ系の文化が混じり合って生まれたとされる。
ヒターノは北インドに由来する移動型民族のことである。スペインにおいて、異文化を持ち、しかも少数者であった彼らは同化政策に苦しめられた。その激しい嘆きと苦しみを歌に表現したことが、フラメンコの起源となった。そこにスペイン・アンダルシア地方の、そして15世紀以前にスペインを占領していたアラブの文化が交じり合い、フラメンコを形作っていった。
実際、フラメンコにはいくつかの曲種があるが、その中にはソレアやシギリージャなど、強い嘆き悲しみを題材に取ったものが少なく無い(そして、こちらの方が起源に近いとされる)。一方、喜びを歌ったアレグリアスやかたつむり売りの歌カラコレスなど、明るい曲調の曲も多く存在する。
また、こういった歴史的経緯から、スペインの文化としてフラメンコを挙げることに否定的な人や、逆にヒターノ・フラメンコ以外を快く思わない人もいる。一方、フラメンコは多文化の融合の中で発展し、数多の名演を生み出してきたこと、スペインでフラメンコを愛する人が多く存在することもまた事実である。
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フラメンコギターは電気増幅を用いないアコースティックギターの一種であるが、テンポの速い音楽を歯切れよく奏でられるよう、音の減衰が早くなるように作られている。そのため、比重の軽い木が用いられており、またクラシックギターよりボディが薄い。また、ゴルペ奏法(ギター本体を叩きながら演奏する奏法)から本体を保護するため、ゴルペ板という板をギター前面に貼ることがある。
他にも、右手を握り、小指から人差指まで一本ずつ広げるようにしながら爪の表側で弦を弾く「ラスゲアード奏法」や、人差指と中指を交互に用いて同じ音を弾く「ピカード奏法」などがフラメンコギターの奏法として知られている。
ちなみに、他によく用いられる楽器として、パリージョ (カスタネットの仲間)やカホンがある。 最近ではフルートやヴァイオリン、ピアノなど様々な楽器とともにパフォーマンスされる。
ルシアの名前の由来は”フラメンコの神様”とも呼ばれるギタリストパコ・デ・ルシア(Paco de Lucía、本名Francisco Gustavo Sánchez Gómez, 1947-2014)から。
幼少期からギターに親しんだ彼は、19歳にして"La Fabulosa Guittara De Paco De Lucia"(直訳は「パコ・デ・ルシアの素晴らしいギター」, 邦題は「天才」)ソロアルバムデビューを果たした。
同年、伝説的なカンタオール(男性歌手)のカマロン・デ・ラ・イスラと共演アルバムを発表した。以降カマロンの死まで共演は続き、フラメンコ界に大きなインパクトを与え続けた。
更に、1973年にアルバム"Fuente y caudal"中の曲"Entrer dos Aguas"(直訳は「二つの水の間」, 邦題「二筋の川」)が大ヒットし、スペインのみならず世界中にパコの名前が知れ渡ることになる。
その後ジャズ界でも存在感を発揮しつつ、フラメンコに回帰したアルバム"Sirocco"をリリースするなど活躍を続けた。
ちなみに、特殊攻撃やアビリティの名前もフラメンコ由来となっている。
- ファルセータ
フラメンコの曲中、ギターが独奏でメロディを弾く部分。
- バモス・アジャ
¡Vamos Alla!, 日本語だと「さあ行こう!」といった意味の掛け声である。
フラメンコのパフォーマンスでは、演者や観客が応援の掛け声(ハレオ)を掛けるのだが、その際によく用いられる。
ちなみに¡Ole!(オレ!)という掛け声を聞いたことがあるかもしれないが、こちらも頻繁に使われる。
- パルマ
フラメンコの手拍子である。
- アバニコ
扇子のことで、フラメンコの小道具として使われる。(ルシアはギターと一体化させているが……)アバニコ奏法というギター奏法があるので、これと掛けているのだろうか?
最後に、フラメンコに興味を持たれた指揮者諸氏にはぜひフラメンコを一度観ることをお勧めしたい。
YouTube等で “flamenco”と検索すれば数々の動画を見ることができる。
実際に見るのであれば、タブラオ(フラメンコショーを見られるスペインレストラン)に行くのが良いだろう。(実装当時の時勢だと難しいが)。
また、イベント等でプロのパフォーマンスや教室の発表会が見られることもある。
ちなみに、日本は発祥国のスペインに次いで2番目にフラメンコ人口の多い国として知られている。老若男女に愛されており、教室も日本各地に存在する。
音楽に興味を持った諸氏は、CDから入るのもいいかもしれない。
- ギターなら
- パコ・デ・ルシア(Paco de Lucía)
- トマティート(Tomatito,本名はJosé Fernández Torres)
- マノロ・サンルーカル(Manolo Sanlúcar)
- 歌手であれば
- カマロン・デ・ラ・イスラ(Camaron de la Isla)
- エンリケ・モレンテ(Enrique Morente)
- ラ・ニーニャ・デ・ロス・ペイネス(La Niña de los Peines)
などが有名どころである。歌詞はスペイン語で歌われているが、意味を理解せずともその熱演・熱唱に圧倒されること間違いなし。
勿論上に挙げた以外にも、日本人を含め素晴らしいアーティストが沢山いるので、ぜひ色々見てみてほしい。
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